遍路日記(番外編)
さて、お礼参りが終わった日、私は知人のLさんに会うために夜行バスで広島へと向かった。
翌朝広島バスセンターに到着。
この日は金曜でLさんはお仕事だったので、私は街を歩いたり公園に行ったりして彼女から連絡がくるのを待っていた。
まず朝日コーヒーという喫茶店にてモーニングをいただいた。レトロな雰囲気も味も値段もよかった。
その後原爆ドームを眺め、ひろしま美術館に行く。チケットを購入したとき中庭にカルガモ親子が侵入してきていたので、しばらく追いかけて観察をした。美術館の女性職員も出てきてキャーキャーと言いながら写真を撮ってたのが微笑ましかった。それらの光景に癒された。
作品を眺め、画家は自分の好きなものを描くし、自分の好きな場所に住むし、ああなんだか自分らしく生きているなあ、モバイルボヘミアンみたいだなあと思った。何はともあれ当面の私の課題は自分の心の声に耳を傾けることだろう。
その後図書館前のコンクリートで金剛杖を半分に折り、芝生の場所でコマを少し回して遊んだ。お昼にせっかく広島に来たのだからとお好み焼きを食べて、音戸温泉に入る。髪を剃るか剃らないかで迷ったが結局剃った。
7時過ぎ、Lさんから「ヤマダ電機わかります?」「日傘をもったスーツの女性です」との連絡があったのですぐにそこへと向かう。
ところで、Lさんと私は私が大学生のころからの付き合いで、日頃のモヤモヤを綴ろうと初めてブログを始めたときによくコメントをしてくれていた人物である。私も彼女のブログにコメントをしていて(後ほど分かるのだが安藤裕子について検索していたらLさんのブログを発見したらしい)、その後も手紙や年賀状、4コマをあげたり、贈り物をし合ったりという付き合いが続いていた。しかしこの日まで一度も顔を合わせたことはなかった。
指定された場所に近づくと、横断歩道の向かいで不自然に日傘を抱えた女性が目に入り、それがLさんだとすぐにわかった。
初めましての握手をしようと思ったのだがタイミングを逃し、Lさんが先行して居酒屋へ案内してくれ、ご飯を食べてお酒を飲んで色々な話をした。家まで一緒に歩き、宿がないのなら隣の部屋にソファがあるのでそこで寝ますか?と言われたが断り、握手をしてハグをして別れた。ぎゅーと力が強かった。
Lさんはすごくよそよそしかったけど、丁寧に頭で考えて話をする人でよかった。
沈黙がお互いに苦にならず、一緒に過ごしてとても楽だった。
いい人だった。
真面目な人だった。
"なんか"というのが口癖だった。
別れた後、街を歩いていると、なんだかとても泣きそうになった。
一緒に写真撮りたかったけど撮らなかった。
また生きているうちに会いたい。
会えるかな。
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カニのようなヘアスタイルを手掛かりにまた会いたいなと漁師を目指す。そうすることで彼女に近づける?原作:Lさん
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その日は公園で野宿をする予定だったが、いい場所が見つからず結局ネットカフェに泊まった。
翌日、バス停のホームに行くとなんとサプライズでLさんが見送りに来てくれていた。
そして一緒に写真を撮った。
そして今、私は彼女と一緒に暮らしている。
おわり