遍路日記(4日目)
道心禅道場にて朝5時に起床。
お勤め(般若心経が殆ど)をして、キムチ鍋(昨日の和尚の夕食の残り)に麺を入れたものを食べ、清掃、皿洗いの後にパッキング、焼香をした。
出発の時間になり、和尚にお礼を言い握手をして別れた。
彼は旅立つ私たちに手を合わせてくれたし、最後まで手を振ってくれた。
背中を向けて思う。
あれだけ修行をした人でもさみしいんだなあと。
和尚は実際に何年も修行をしており(3年間門外不出)言葉には重みがあったし、同時に穏やかな口調はお互いの壁を意識させることはなかった。
道場に宿泊するには始めに仏様へ1000円お布施をすることになっていたのだが、和尚は「始めに1000円お布施をすれば何泊でもしていいよ」と言ってくれた。
また、途中
「時間があるなら明日も泊まっていきなよ。朝座禅して昼は畑仕事をすればいいんだから」と言うこともあった。
私たちはすでに翌日の予定を組んでいたので曖昧な返事を返していた。
その後も何度か和尚からの誘いがあった。
執着を捨てたとは言っていたけど、さみしい気持ちは捨てられていないのではないか。
私は出家だとか悟りだとかそういうものに最近興味があったのだが、今回の体験を通して
頑張って修行してもさみしいんだったら、つらいことも楽しいことも全部受け入れて受け止めて生きていくほうが素敵なのではないだろうか
と強く思った。
お勤め後、朝食を食べているときに和尚がぼそりと言った「いやーなかなか楽しかったよ」という言葉が頭からはなれず、今でも私はこの体験を思い出してはなんだかせつない気持ちになる。
その後、焼山寺からの下山(実際は下って上っての繰り返し)がとてもきつかった。
途中大阪から来た親子と会い、ちょくちょくすれ違っていた。
またこれまで時々すれ違っていた2人組は中国の人だとわかった。
昨日コーヒーの接待のときにお話ししたYさんとも再会した。
峰を上りきったときKくんと握手をして別れた。後ろを振り返らずに私は自分のペースでずんずんと進んだ。
途中女性と出会い、別格の2番(本当は3番)で穴禅定ができるということ、
16番の観音寺で白衣の襟に光明真言の印を押してもらえることを教えてもらった。これはとてもラッキーだった。
てくてく進み、別格2番童学寺へ。
綺麗な道が続く。
その後、旅で初めてのトンネルがあった。
誰もいなかったので大声を出しながら歩いて気持ち良かった。
トンネルを過ぎた辺りで梅干しの接待を頂く。
童学寺は本堂が焼けており(漏電とのこと)特に見所もなかった。
そこから次の目的の13番札所大日寺までも地味に遠く、肩と腰が痛かった。
道中に接待小屋があり、「ご自由に」とコーヒーとみかんが置いてあったのでいただく。
みかんは疲れた体にすーっと染み込んでいくようでバクバクと貪るように食べた。
おいしかった。
大日寺の納経所で「通夜堂(宿泊できる場所)があると聞いたんですが?」と訊ねるとないとのことだった。出発前はここに宿泊しようと計画していたが断念。
「美味しいもの食べれる場所ないですか?」と訊ねると
16番辺りに行けばいっぱいあるよと教えて下さり、残り2時間くらいあったので、そこまでかなり頑張って歩いた。
なぜ時間が関係するかというと
お寺で納経(雑に言えば御朱印集め)できる時間が7時から17時までと決まっているからである。
17時以降に寺についても当然納経はできないし、よって次の寺まで進むこともできない(無駄になる)のだ。
このことから必然的に早寝早起きにならざるを得ない(野宿をやっていることもある)ので健康的ではあるし、またスケジューリングがとても大事になってくる。
納経時間外にあえて長距離を移動するようにするといったコツも分かってくる。
まあ一体全体何を目的としてお遍路しているのかよくわからなくなってはくるが。
14番常楽寺入口にて入れ物つきお菓子の接待をいただく。
道中頑張ってとの車からの声もあった。
15番札所から16番札所までは今までにない早歩きで進んだ。
昨日会った結願さん(胴上げした人)が、
「野宿をしていて宿代0円だから食事は贅沢する」
「赤信号と同じで急いでもあんまり変わらない」
と言っていたことが心に深く残っていたのが、
今日は急いだし、結局ご飯はスーパーで済ませてしまった。
16番札所観音寺にて朝女性から聞いていた、光明真言の印をもらう。(弘法大師直筆らしい)
これは輪袈裟(首にかけるもの)の代わりになるとのこと、とにかくかっこいいとのことだったので迷わずにお願いをした。
お金がいくらかかかるとは思っていたが、2000円と知ってちょっと後悔した。
宿泊場所をどうしようか悩んだが、17番井戸寺に通夜堂があるとのことだったので向かう。納経時間も過ぎていたのでゆっくり歩いた。
通夜堂には誰もいなかった。
2人寝れるくらいのプレハブのような建物であったが、とても快適だった。
左足小指に豆ができてつぶした。痛い。
豆は危険と何度も言われていたので少し不安になる。
明日は5時には起きようと思う。
悦道さん(和尚)に一言書いて頂いたもの。
過去も未来も考えず、今を全力で一所懸命に生きれば何れ結果は現れるとのこと。